「Googleを支える技術 巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)」: 西田 圭介

Googleを支える技術 ?巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)

Googleを支える技術 ?巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)

 100頁くらい読んだところで、真ん中を飛ばして、第5章の運用コストへ。この試算に依れば、グーグルのサーバーマシン数は合計約200万台。1台1000ドルとしても、約20億ドル(2000億円)。4年で減価償却して入れ替えるとして、年間約500億円。年間の電気代が約100億円(大体、普通の原子力発電所の1/3くらいの電力)。
 なかなかの設備投資産業だが、最新の液晶や半導体の工場ならば、2000〜3000億円だ。そこまでは行かないが、まるでソフトウエアを書いているだけのようなイメージもあるネット企業としては、破格の設備投資だろう。それ以上にこれだけのサーバーを次から次へと増やして保守運営する運用能力というのが、実は一番のコアコンピータンスじゃないのか。ソフトを書くのは、結構、他の企業でも出来るかも知れないけど、ここまで化け物になってしまうと、他のデータセンターや企業では今から同じことをやろうとしても、ノウハウの部分がマネできないのではないか。そこは、検索エンジンという新しい領域でパイオニアとして立ち上がった企業の圧倒的な強みだ。分野の成長イコール企業の成長だった、という企業が作り上げたオペレーション能力としての参入障壁は、一番強力だ。技術やビジネスモデルなんて、結局何とかなる物だ。
 グーグルもその辺を分かっているから、このあたりについては秘密主義なのだと思う。グーグルは、滅茶苦茶オープンな部分と完全に秘密主義の部分が切り分けられている。ソフトはどうせいくらでも解析してまねできるからオープン、ハードや運用はまねできないようにクローズ。ここは見逃してはいけないポイントだと思う。
 消費電力の分析のあたりも、サーバーやPCに限らず、色々な機器について考える上で興味深い。グーグルが太陽発電などのエコシステムに興味を持っている、と聞いて、最初は違和感もあったのだが、これを読んで得心いった。情報系でなくとも、読む価値のある本だと思う。
 それにしても、これだけの量のデータを集めてきて検索用に保存するって、世界中のインターネットのバックアップとっているようなものだな。無駄といえば無駄だろうこの本でも書かれてたけど、いっそ、全部データを最初からグーグルに渡してしまった方がいいのかも。