どっとネット配信が加速する

レディオヘッド、新作のリリースを語る | BARKS

水曜日(10月10日)、7枚目のスタジオ・アルバム『In Rainbows』をダウンロード・オンリーで発表したレディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークが、初めて新作のリリースについて語った。

アルバム発表当日、ヨークはオフィシャル・サイトRadiohead.comに「hard hats on..」というタイトルのメッセージを掲載した。「『In Rainbows』のダウンロードを楽しんでくれてることを願ってる。ようやくリリースできてホッとしてる。クレイジーな2週間だった…ご想像通り…」

レディオヘッド、新作のダウンロード始まる | BARKS

水曜日(10月10日)、レディオヘッドのニュー・アルバム『In Rainbows』が、バンドのオフィシャル・サイト(Radiohead.com)よりダウンロード可能となった。先行予約していた人は、10日朝(英国時間)にリンク先が添付されたメールを受け取ったはずだ。

購入者が価格を設定できるというユニークなリリース方は、ファンだけでなくミュージシャンの間でも好意的に迎えられている。レディオヘッドのマネージャーは「サイトには“正直言って、レディオヘッドは好きじゃないが、いくらかお金を出すつもりだ。素晴らしいアイディアだと思うから”との書き込みもあった」と話している。

 ・・・・・・ バンドは来年初めに同作を従来のCDフォーマットでリリースすることを計画しており、チャート入りするとしたらそのときだ。

B3 Annex: 音楽業界激震続く 今度はマドンナがレコード会社契約から離脱へ
そして壁は崩れはじめた―マドンナ、レコード業界を捨てる | TechCrunch Japan

Nine Inch Nailsがレコードレーベルを捨て、今後はアルバムを直接一般に公開するというニュースを土曜日に報じてから、OasisJamiroquaiも同じくレコード業界を離れた。しかし、今日一番のビッグニュースは何といってもMadonnaがレコード業界を捨てたことだ。

記事によると、MadonnaはLA拠点のコンサートプロモーション会社Live Nationと$120M(1億2000万ドル)の契約を結び、これにはスタジオ録音版アルバム3枚と、コンサートツアーのプロモーション、商品の販売、それにMadonnaの名前の使用権が含まれる。

Other UK bands to copy Radiohead – TechCrunch
 オアシスとジャミロクワもダウンロード販売レディオヘッドと同様に、いくら払うかはお客さんが決めるというシステムで次のアルバムを販売することを考えているらしい、とのこと。
NINが永遠にレコード会社とおさらば - what's my scene? ver.7.2
 NINも直接ダウンロード販売に移行するみたいだ。

 ここ数日の間に、超大物のアーティストが一斉にネット配信への意向を表明した。ポイントを抜き出してみると、

  • CDが古い技術だから出したくない、といっている訳ではなく、レコード会社と契約するのが嫌だ、といっていること。
  • ファンに直接販売できる、ということ。
  • 十分に知名度のある大物ばかりだ。

ということか。
 「いつでもダウンロードにしちゃうよ」という脅しの意味合いもあるのだと思う。だから、オアシスとジャミロクワだって、本当にネットオンリーに移行するかどうか分からない。マドンナは交渉材料っぽいような気もする。レディヘとNINはかなり確信的にレコード会社ありきの既存の音楽業界の構造を揺さぶるつもりなのだと思う。
 ビートルズ以来、自分たちのレーベルくらいまではミュージシャンも作ったりしてきたけど、結局、販売とか流通という意味ではどうしてもレコード会社はこれまで必要だったから、レコード会社との契約なしではファンに作品を届けることが出来なかった。従って、どうしても、レコード会社の力が強くなる。言うことを聞かざるを得なかった。
 でも、ネット配信にしてしまえば、自分たちで配信すればいい。レコード会社の言いなりになる必要はない。色々な制約を受けることもない訳だ。
 ビジネスとしてはどうなるんだろうか。PCの世帯普及率は日本も欧米も約7割だから、売り上げも7割くらいになるのかもしれないが、レコード会社の取り分の利益が印税並みの7%とすれば、ミュージシャンの取り分は倍になる訳だ。多分、売り上げが7割でもミュージシャンの実質的な収入は間違いなく増えるだろう。
 今回の一連の騒動のミュージシャンは超ビッグネームばかりなので、新作をリリースするとなれば、色々なメディアが勝手に取り上げてくれるから、自分たちによるプロモーションはこれまでのレコード会社のプロモーションのようには行かなくても、それなりにメディアには露出するだろうから、ある程度は何とかなるのかもしれない。
 今の音楽の売り上げは、日本の場合なら、一握りのメガヒットとそれ以外に二極化している。その一握りのメガヒットでそれ以外のミュージシャンを売り出している訳だから、ビッグになると独立してダウンロード販売になってしまわれると、もう、レコード会社はやっていけなくなるだろう。だから、こういう事をされると音楽業界全体が衰退して良くない、なんて、すぐレコード会社は言い出しそうだけど、もう欧米ではMySpaceから新人が人気を集める時代になっている訳だから、ほんとにレコード会社っていらなくなりつつあるんだな。
 ただ、これで一気にCDがなくなってしまうというのは行きすぎで、CDが欲しいという人だって一杯いる訳だから、CDがすぐなくなる訳ではないと思う。でも、ミュージシャンの交渉権がぐんと強くなり、レコード会社がやっていけなくなってくるんだと思う。実際、最近レコード会社の買収や合併も進んできている。逆に、レコード会社じゃなくても、販売してくれるネットワークがあれば良いんだから、スターバックスポール・マッカートニーのCD出しちゃうと言うのも可能になったりする訳だ。レコード会社はつべこべ余計なこと言わないで、流通だけやればいい、ということになる。まあ、そう言ってしまえば、ダウンロードだって同じことなんだから、配信と代金収集だけ専門に請け負います、なんて言う水平分業的な会社も出てくるんだろうな。そうなると、評論家や雑誌の代わりに色々なポータルサイトも出てくるだろう。
 しばらく、音楽業界のビジネスモデルの動向はおもしろそうだ。ただ、それで音楽がおもしろくなるかどうかはまた別の問題かもしれない。日本はまだこういう事言っている訳だから、いつの間にか欧米の流れに巻き込まれて既成事実が出来上がって、ずるずると引きずられてゆるゆると変わっていくんだろうか。