「ドリームガールズ」

監督:ビル・コンドン
音楽:ヘンリー・クリーガー
出演: ジェイミー・フォックス カーティス・テイラーJr.
ビヨンセ・ノウルズ ディーナ・ジョーンズ
エディ・マーフィ ジェームス・“サンダー”・アーリー
ジェニファー・ハドソン エフィー・ホワイト
アニカ・ノニ・ローズ ローレル・ロビンソン

http://www.dreamgirls-movie.jp/top.html
映画 ドリームガールズ - allcinema
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 どんなもんだろう、と思いつつ何となく見に行ったのだけど、すごく良かった。ソウルやR&Bが好きな人は絶対見た方が良い。知らない人が見ても楽しめると思うけど、やっぱり見方はちょっと違うかなと思う。モータウンシュープリームスマーヴィン・ゲイの話と思ってみるのとそうでないのとでは全然違う(とは言っても、そのままという話ではないし、他の人の色々な話もごちゃごちゃに混ぜ合わされて脚色が色々加わっている。全部こうだと言えるほどこの辺詳しくないけど)。勿論、そういうマニアックな興味だけで見ると、こういうのって、あれこれ細かいとこだけに拘ってつまらなくなってしまうから、そういう知識は知識として知りつつも、この映画はこの映画と思ってみるというのが、正しい大人かなあ。
 これは、シュープリームスを中心としたモータウンの裏側の暴露もののミュージカルの映画化で、全部名前は変えてあるけど、知っている人なら全部わかってしまう。暴露ものとしては、メンバーと周囲の人たちの関係が問題になりそうだし、マービン・ゲイに関する部分はいろいろまずそうなので、脚色している。さすがに、女装癖のある宣教師の父親に撃ち殺されたって、悲しすぎるからなあ。。。(後記:と、思ったけれど、これはミュージカルの初演が1981年で、マービンが死んだのは1985年だから、ちがうのかなあ?離婚絡みのトラブル、情緒不安定な状態、ダイアナ・ロスとのデュエット・アルバムもあるし、絶対そうだと思ったんだけど、多分、色々な人のエピソードの寄せ集めなんだろうな。ベリー・ゴーディーは間違いないけど。)モータウンネタとしては、ジャクソン5のモノマネ、マイケル役の子がムーンウォークの真似事ちょっと見せたりして、微笑ましかった。エディ・マーフィーの帽子も、にやりとさせられる。

 ミュージカルなので、見せ場になると歌になる。内容的にも、それは歌手の話なので説得力がある。ミュージカル映画って、半ば死滅したジャンルになってしまったけど、これは良かった。あたしもう止める!というのを、We are familyーと引きとめるところとか、もう、我慢できないから出てけ!というところとか、最後の「私たちは4人」というとこなんか、もう、何でこんなに歌うことってそれだけで良いんだろう?と、涙が出てくるくらい。言葉や演技だけでは伝えきれないものが、歌とアクションになることで、その心、その感情そのものの形で現れるというのが、ミュージカルの素晴らしさだと思う。シンガーの話なので、歌が始まるところの自然さが本当に絶妙で感動的。
 で、音楽としてどうかというと、CDよりDVDが欲しいなあ、と思った。ビヨンセも、ほかの出演者もバリバリの歌手なので、ミュージカル映画としては見事(というより、そもそもブロードウエイのミュージカルの映画化だけど)。こんな良いミュージカル映画をハリウッドが作ったのは久しぶりじゃないだろうか。でも、音楽だけサントラで聞くと、偽物モータウンサウンドに聞こえるかもしれないし、むしろ、モータウンの本物を聞く方がいいから、サントラは手を出さないで、廉価版のDVDが出たら買おうかなー、と思った。音楽として駄目だ、二流だ、なんていう積りはないけど、ミュージカル映画の音楽として良い、というのと、音楽としてそれだけ取り出して良いか悪いか、というのはまた別だと思う。DVDで、パラパラと曲の部分だけ拾いながら、酒飲みながら「ここがいいんだよなあ」なんて言いながら見るのが楽しそうだな。
 それにしても、ダイアナ・ロスは、これを見たのだろうか。個人的には複雑な感慨もあっただろうけど、彼女もビリー・ホリデイの生涯の映画化で主演しているし、彼女自身に対してはこの映画は一貫して好意的だから、暗黙の肯定という感じなんだろうな。goo映画の特集見てたら、ビヨンセダイアナ・ロスに仁義を切りに行ったって書いてあったけど、ホントかな〜。まあ、ビリー・ホリデーをダイアナ・ロスが演じ、そのダイアナ・ロスを今度はビヨンセが演じるというのは、歴史は巡るというか、感慨深い。このオリジナルのミュージカルが1981年初演で、ビヨンセはこの年に生まれたと言うんだからねえ。さすがにダイアナ・ロスも怒れないな、これじゃ。

Lady Sings the Blues [VHS] [Import]

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 ビヨンセダイアナ・ロスは、この人しかいないだろうけど、エディー・マーフィーのマービン・ゲイというのは意外だった。でも、まっとうな人では彼の悲しさが重く出すぎたし、映画としては良かったんではないだろうか。ビヨンセも良かった。エフィーがリード・シンガーを降ろされるところまでは、スンごく控えめで目立たなくて、カツラしてるし、あの時代のメイクやスタイルなので、あれ、ビヨンセどっちだろう?なんて思うくらい地味なんだけど、リード・シンガーになってからは、もう、さすがにオーラが爆発していて、無茶苦茶、色気が溢れ出す。ここの切り替えもすごかったな。歌はお手の物でも演技には不安な彼女にしてみれば、そこは役柄そのままだからやりやすかったんだろうな。エディー・マーフィーやジェイミー・フォックスの歌も良かった。俳優やコメディアンとしては言うに及ばないけど、これだけ歌えるというのが本当にすごい。黒人のエンターテイナーって、あのくらい歌っちゃうんだねえ。そういうのが文化なんだよな。ジェニファー・ハドソンも、これで助演女優賞総なめにしていたけど、それも当然という出来。なかなかこういう歌いっぷりの曲なんて、最近余り聞く機会無いけど、アメリカはちゃんとこういうレベルで歌える人がちゃんといるところにはいる。彼女は演技も良かったし、主役を食っていたかなあ。
 シュープリームスのあのサウンドができるまでの経緯というのは、あまり知らなかったけど、言われてみれば、あまりにソフィスティケイトされた完全さという嫌いはあるかもしれない。されど、後世から見れば、あのダイアナ・ロスのシルクのような声抜きには考えられないので、逆にダイナマイトなシュープリームスなんて想像できない。ダイアナ・ロスの歌って、人工的と言いたくなるくらいスタイリッシュな歌い方で、洗練の極みのような歌声だと思う。ちょうどその頃の濃いマスカラやカツラのような髪型やバービーのようなミニのドレスといったファッションみたいに。アレサ・フランクリンのようにソウルフルとか、深みのある歌、という種類じゃない。だから、汗まみれで、ソウルフルで、ダイナマイトで、力の限り魂をぶつけてくるマーヴィン・ゲイとのデュエットは、そのコントラストが美しくて好きなんだよなあ。"You're everything"とか、泣きたくなるくらい好きだなあ。
Diana Ross and Marvin Gaye

Diana Ross and Marvin Gaye

http://www3.ocn.ne.jp/~zip2000/daiana.htm
積ん読になっていたこの本をパラパラめくる。勢いが付いたところで読んでみようかなあ。積ん読の本ってこういうきっかけがないと読まないんだよなあ。
モータウン・ミュージック

モータウン・ミュージック