「世界」監督ジャ・ジャンクー@新文芸座

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 ちょっと無理して、最終回を見に行く。うーん、やられた。でも、どこから話を始めたものか。
http://page.freett.com/beijing/j/shijiegongyuan.htm
北京世界公園ーAraChina中国旅行
 まず、あの「世界公園」を舞台にしたところで、半ば成功を約束されたようなものだ。あれは面白い。いくらでも絵になる。エッフェル塔にピラミッドにロンドン橋、無いのは万里の長城くらいかも?あそこを走る芋虫みたいなモノレールも良い。この人は本当に風景をとるのが神様みたいにうまい。それも動きを入れて、モノレールから下に声をかけると、それがそのまま地上の話につながって行ったり、もう嫌になるくらい見事。
 オープニングも「バンドエイド!」と叫びながら、楽屋を回るところの長回しから始まるけど、あれも流れが切れないので、一気に無効の呼吸のリズムに引きずり込まれた。オープニングのところで、屑屋のおじさんが画面に左から入ってくるのだけど、真ん中で立ちどまって、一瞬カメラ=観客の方を見る。だから何だといわれても、妙にどきっとして覚えているというだけで、何か深い意味があるシーンでもないのだけど、そういうしぐさのようなもので人を不意打ちするのが、この人の映画のすごさというか、芸というか、面白さだと思う。
 ストーリーも登場人物もはっきりしているけど、何となく群像劇をみたかのような印象が残るし、ストーリーも淡々と描かれているところがある。なのに、まるで水の流れのように、人々の人生も流れていくあの感じが何とも言えない。それがやるせなさみたいなものではなくて、アジア的な人間関係の暖かさや優しさの中でも、運命の流れに誰もが流されていく、それがこの世界とでもいったような感じ。あのアニメーションも変な感じで面白い。あの途中に出てくる字幕タイトルみたいなのって、本で言えば章ごとのタイトルに相当するんだろうな。きっと、この人はタイトルを付けるのが好きなタイプなんだと思う。