「我が戀は燃えぬ」:監督 溝口健二@東京国立近代美術館フィルムセンター”没後50年 溝口健二再発見”

’49(松竹京都)84分・35mm・白黒 (原)野田高梧(脚)依田義賢新藤兼人(撮)杉山公平(美)水谷浩(音)伊藤宣二(出)田中絹代水戸光子三宅邦子、菅井一郎、千田是也東野英治郎、小澤栄太郎、松本克平、濱田寅彦、清水將夫、宇野重吉

 今日は2時の回から見ようと思ったのだけれど、直前に行ったら満員で「夜の女たち」を見逃す。15分前くらいで一杯になったらしい。明日のラインアップだと、30分前でも危ないかもしれないな。続けて見るなら、席は後ろ目ですぐ出て並ばないといけないかもしれない。
 1948年というと戦後3年目。なんだか、溝口にしては固い話だけれど、自由や人権などに声を上げるような話をしなければという時代の空気もあったんだろうな。田中絹代だし。
 こういう女の不幸話させると、やっぱりすごいなとつくづく思う。岡山から頼りにして出てきた男は自由民権運動のスパイに走るし、獄中で再び一緒になった昔のお手伝いの千代を出獄後住み込ませれば夫と出来てしまうし、夫も夫で自由だ、民権だ、と言いながら「俺に妾がいたところでどうなんだ」と女性の人権とか地位なんて本音では真面目に考えていない。こう言うのは、田中絹代はまり役だな。
 工場とか秩父争議の場面なんか、すごく迫力ある。3年前まで戦争やっていた人たちの顔つきって、やはり、今とは全然違うんだなあ。久しぶりにこの時代の映画を毎日続けてみていて思うのは、この頃の日本は貧しかったが、この溝口健二の映画もそうだし、こうした映画の中に出てくる芸者の置屋なんかにしても、サービスとかコンテンツにすごく人手がかかっているなあ、ということだ。今じゃ、芸者呼んで宴会やったら幾らかかるのやら。まあ、この映画の中だって、接待で芸者を呼んでもらえるのは、中央官庁のお役人だったりする訳だし、今もあるところにはあるんだろうけど。