「三峡好人」東京フィルメックス・オープニング@東京国際フォーラム ホールC


オープニング:クリス・フジワラ(映画評論家)、チャオ・タオ(俳優)、キム・ドンホ(プサン映画祭ディレクター)、ジャ・ジャンクー(映画監督)、諏訪敦彦(映画監督)、大島ともよ(映画編集者)

Q&A:ジャ・ジャンクー(映画監督)、チャオ・タオ(俳優)

 ジャ・ジャンクー賈樟柯)恐るべし。始めて見たけど、参った。冒頭の船の中の込み合った人々のパンから移動への撮影一発でガツンとやられた。最後のシーンの綱渡りまで、これは何なのだ?という衝撃。久々の気持ち良い戸惑いと驚き。「世界」も見逃すんじゃなかった。ベネチア映画祭の金獅子賞は伊達ではない。
 細部がやたらと心騒がせる。ふとしたことでも忘れられないものとか風景があるけれど、そういう感覚が全編に絶え間なく異様なまでに溢れている。船の中の人混みや町並みのあのゴミゴミした、ここで人間が本当に生活しているのだという感じ。中国の名所でもある三峡の山や川やダムなども背景に出てくるが、カメラは人を追う。UFOとかビルが飛ぶとか、「酒 The Liquor」「煙草 The Cigarette」とか変な字幕が入ったり、よくワカランところもあったけど、それが違和感がないところがまた不思議だった。
 上映後のQ&Aも的確な質問が熱心に出て、非常にいい雰囲気のオープニングになった。宴会を蹴っ飛ばして行って良かった。フィルメックスも7回目とは、良くここまで来たなあ。やはりここは主催者の顔が見えて、誠意が伝わってくるので、単に映画を見る以上のものがあるので、毎年行きたくなる。
 Q&Aはこんな感じ。「着メロ自慢、何故チョウ・ヨンファの『男たちの挽歌』?」「渡世人っぽい感じで、と。」「あの歌を歌ってた子は?」「あそこで客引きしてる子だけど、映画に出してくれというので歌ってもらった。」「あの飛んでいくビルディングは?」「立てかけで予算がなくなり中断したダム建設の記念碑。見苦しかったので、飛ばした。」「ドキュメンタリーとの関係は?」「10日間かけて、あそこで絵書きの友達が地元の人の絵を書くドキュメンタリーをとった。それだけでは、あそこの人の内面が描けなかったので、3日間で脚本を書いて映画をとった。5日間に1つずつ建物がなくなっていくので急いだ。」「『ヴァンダの部屋』見た?」「見た。監督は友達だ。意識はしなかった。」こんな感じ。
 賈樟柯監督は最初ヌボーとした感じに見えたけど、この人、むちゃくちゃ頭が良さそうだ。12月から中国でも公開されるそうだけれど、中国最大級の国家プロジェクトの背後で生じる社会問題とも言えるテーマだけれど、これを公開出来るということは、中国も少しずつではあっても民主化されつつあると考えていいのだろうか。東京電力の一般家庭向け販売電力量並の発電量を持つ三峡ダムの建設で200万人以上が家を追われるという。
三峡ダム - Wikipedia
アジアのエネルギー最前線 北京より三峡ダムを見て上海より帰国 ODA 電力 水力)Section targeting
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TPSankyou.html
奉節県 - Wikipedia