「怪猫トルコ風呂」&「黒蜥蜴」@シネマヴェーラ渋谷、 ”妄執、異形の人々”

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怪猫トルコ風呂
 「怪猫トルコ風呂」は、殿山泰司山城新伍も出演している怪作ポルノ映画。突っ込みどころ満載でまあ面白かった。あのでっぷりした黒猫のかわいくなさが秀逸。良くあんな憎たらしい猫見つけてきたもんだな。

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 それよりも、「黒蜥蜴」ですよ、「黒蜥蜴」。いやあ、これは本当に良かった。ずっと見たかったけど、見逃していたのを、やっと見ることができた。丸山明宏のあのセリフ回しの素晴らしさ。それをそのまま映画のテンポにした深作欣二の演出も良い。美術も良い。良い、良い、マジで良い。
 江戸川乱歩だから、最初からこれは宿命的にカルト性持ってるし、三島由紀夫が特別出演してしまうと、もう分類としては、まごうことなきカルト映画ということになる。でも、それは間違っている。これはまごうことなく単に映画として傑作だからだ。サッシャ・ギトリのような俳優の映画の傑作というべきだ。傑作に対して、分類というのは無意味なのだが。
 「明智さん、あなたは犯罪だけが5mも裾を引きずるロマンチックなものだと思っていらっしゃるのね」みたいな内容の黒蜥蜴のセリフがあったけど、この過剰で時代錯誤なロマンチズムの虚構を引き受けることが出来る役者は、丸山明宏以外に考えることは出来ない。こんな役を演じることが出来る女などいる訳がない。
 芝居の映画化がこれほど上手くいくことはなかなかないと思う。芝居のセリフは映画のセリフとしては大仰でなかなかそのままなじまないし、舞台での見せ場の作り方と映画の見せ方も違うから、良い芝居ほど良い映画にしにくいのかもしれない。これは芝居のセリフを忠実に持ってきて、それでうまくいっているというのが凄い。丸山明宏と木村功の2人の名優あっての話だ。音だけで聞いていても、これは楽しいのではないか。丸山明宏のあの存在感で日常的な芝居という訳にも行かないが。
 ビアズレーのサロメというのも懐かしい。キラ星のように耽美なアイコンがほとんど通俗的に跋扈する。乱歩、三島、丸山、ビアズレー、この完全な組み合わせの中で唯一良くわからないのが、何故、監督が深作なのだろう?ということだ。それが、恐ろしいことに映画としては傑作になっている。やはり、芝居を残しつつ、それにひきづられないだけのヌケの良さを出せる脚本、監督ということを考えると、これは大正解の組み合わせだったし、深作の力量と懐の深さが出たということじゃないだろうか。普通、これをアクション映画というイメージがある人には撮らせないんじゃないだろうか。どういう経緯で深作が監督したのか知らないけど。
 大阪のホテルのラウンジバーで黒蜥蜴がライターで合図を送り、下の車がパッシングで答えるあたりなんか、まさに映画的って感じで、深作らしい良い場面だよなあ。
 三島由紀夫もわざわざあの大好きな苦悶の表情をとるあたりが、いかにもというところか。ブルブル震えているのが、誰の目にも明らかで、見てる方もこけたらどうしようと余計な緊張をついしてしまうのが楽しい。
 三島の戯曲を読んでみたくなったけど、絶版らしい!なんと?!帰りに探したけど無い訳だよ。信じられない。早速復刊に一票を投じる。無性に読みたくなってきた。
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江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴 (光文社文庫)