"Broken Flowers" Jim Jarmusch

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 「ジャン・ユスターシュに捧げる」という冒頭の献辞通りの映画だった。あのジャン・ユスターシュの苦さに、ジム・ジャームッシュの独特のユーモアを添えた語り口の味わいは、必ずしも甘く心地よいような種類のものではないけれど、何とも切ない。人生はしばしば、悲劇というにはあまりに喜劇的で、喜劇というにはあまりに悲劇的でありすぎる。その狭間でさすらい続ける中年男をBill Murrayが好演。金持ちの中年男がジャージで1人リビングでシャンペンを飲んでいる姿って、何とも言えず哀れだよな。あのジャージが笑えてきてしまうのが、ますます哀れ。ま、人ごとじゃないが。
 これ、ヴェンダースのこの前の『アメリカ、家族のいる風景』とそっくりな話だなあ。遊び人で成功した孤独な中年男が、まだ見ぬ息子を探しに行く、息子を尋ねて三千里。最後の結末は正反対だけれど、奇しくもこのテーマを今彼らが共に扱うというのは何故なんだろうな。自由を求めたら、家族は崩壊した。もう、両親はいない。子供に対しても、どうして良いのか分からない。自分の親の世代を否定はしたものの、自分がどうすれば親になれるのか分からない。そういうことなんだろうか。
 それにしても、シャロン・ストーンジェシカ・ラングジュリー・デルピーとは、何とも豪華な女優人。最初から最後まで全部ではなくて、オムニバスに近いいつものスタイルなので、これだけのキャストを揃えられたんだろうけど、これだけの役者がちょい役なんだけど良い役、って感じで次から次へ出てくるって楽しいよなあ。