「渋松対談」 ロッキング・オン3月号

 時々、未だに渋松対談だけは立ち読みするのだけれど、今月号は滅茶苦茶面白かった。ネタはホリエモンアメリカのIT産業は、マイクロソフトストーンズの「スタート・ミー・アップ」で、アップルはU2だ、スティーブ・ジョブスはロックだが、日本のIT企業トップにはロックを感じない、ホリエモンは歌謡曲だ、だからダメなんだ、日本のIT企業のトップは三木谷にしてもマネーゲームのスキルが高いだけだ、だからダメなんだ、と言う話。かなり無茶苦茶なことを言っているし、渋松対談でITと言うのがもう違和感ありありなのだが、動物的直感だけで見事に本質突いているのが、抱腹絶倒。
 突っ込めば、別にビル・ゲイツストーンズをCMに使おうといった訳ではないだろうけど、この前行ったシアトルのExperience Music Projectはマイクロソフトの共同設立者のポール・アレンがシアトル出身のジミヘンを称えるために作ったようなもので、この指摘はそれほど外れていない。
 そもそも、ハッカー文化というのは、アメリカじゃあヒッピー文化と深く繋がっている。良い例が、ティモシー・レアリーだ。ビル・ゲイツだって、ハーバード出身だけれど、ドロップアウトしている。大企業に対して、自分たちのやり方で会社を興して挑戦するというベンチャーのあり方は、正にロックなスピリッツだろう。その後で、大企業の経営者としてえげつない鬼のような戦略家になりきれたのが、ビル・ゲイツの凄さではある。そこまでロックか?といえば、転んでいるけど、半端じゃなかったと言うことなんだけれど。
 日本のIT企業の大物経営者じゃ、本物って孫正義だけかもしれない。でも、彼もPCやネットに変革をおこすような技術的な改革をやった訳ではなく、ヤフーなどの企業への投資を大胆に成功させたという投資家的な色合いが強い。大体、ソフトバンクだって、ソフト販売の企業から始まった訳だから。投資家として天才だと思うし、本質を見事に捕まえた功績は評価すべきだが、インベンションを成し遂げた訳ではない。だが、イノベーションを支援し、それに参加したことは特筆すべきだ。でも、それ言ったら、ジョブスだって技術屋じゃないし、ゲイツだって経営者として成し遂げたことで評価されるべきなんだけれど。まあ、これ以上言うと、技術屋の視点に偏りすぎた話になるかな。でも、じゃあ三木谷やホリエモンが新しいビジネスモデルを実現したか?と言えば、そうも思えない。やったことはと言えば、M&Aばかりで、これは孫さんの成功の悪影響かもしれない。ホリエモンのビジネスの場合は、新しかったかもしれないが、それ以前に法令巡視していなかった疑いが日に日に濃くなってきているみたいだが。
 これがロックにとってどうか?と言う見方もあるかもしれない。大企業のCMタイアップなんて、日本みたいなことやめてくれ、というロック原理主義の意見だってあるだろう。
 ひょっとすると、日本で一番ロックっぽいのって、「はてな」かもしれない。でも、肉食系じゃなくて草食系のくるりみたいなものかも。「はてな」のテレビCMやるとしたら、くるりが良いかもしれない。