TAKESHIS'

監督・脚本・編集:北野武

出演:ビートたけし/京野ことみ/岸本加世子/大杉漣/寺島進 /渡辺哲/美輪明宏/六平直政/ビートきよし/津田寛治/石橋保/國本鍾建/上田耕一/高木淳也/芦川誠/松村邦洋/内山信二/武重勉/木村彰吾/THE STRiPES TOSHI DJ HANGER

プロデューサー:森昌行/吉田多喜男
撮影:柳島克己
照明:高屋齋
美術:磯田典宏
音楽:NAGI
衣装:山本耀司
配給:松竹/オフィス北野

2005年/日本/1時間47分/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD

■第62回ベネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作品

公式HP:http://www.office-kitano.co.jp/takeshis/
 これは問題作と言うことになるんだろうな。というのは、やりたいことをやりたいようにやっちゃっているから。笑わそうとか、泣かそうとか、昂奮させようとか、意表をつこうとか、そういうこと考えて作っていない、というのが”やりたいようにやっている”ということの意味。頭に浮かんだ妄想をもうきりがないくらい、夢落ちの夢落ちの夢落ちみたいにして果てしなく続けていく。これは殆ど、しりあがり寿の世界みたいな映画。お上品にいうと、フェリーニみたいな映画、ということになるけど、『女の都』なんかより遙かにつなぎが旨いよ、これは。形の類似性一つで、レコードとDJのシーンが京野ことみのオッパイのシーンにさらりと繋がっていくんだから。
 たけしの頭の中をそのまま映画にしてしまったような映画ということになるんだろうなあ。これは、もう良いとか悪いとか、そういう次元の問題ではなくなっている。もう映画撮らないかもしれないな、と言う気もふとしたりする。仕事なんかしないで、飲んだくれのアル中のオヤジになってしまいかねないような人だからなぁ。
 冒頭のシーン、拳銃を突きつけあった相手が「どうする?」というが早いか、正面切って撃ちまくり、敵も味方も撃ちまくり、ばたばたとどちらも倒れていく中、たけしだけは撃ちまくり、一人生き残り、その場を去っていくというとこなんか、嘘も良いところというか、神としかいいようがないんだけれど、やっぱりあの呼吸は良い。死体をよけながらタクシー運転するところとか、デモ隊まで突っ込んでくる海辺のシーンとか、いいシーンがいっぱいあったなあ。みんな過去の作品をもう一度繰り返しているようなシーンなのだけれど、それがリメークでもないし、引用でもなくて、もう一度同じようなシーンを意識的に撮りながら、何かを考えているような映画。その何か、というのが多分撮っている当人しかわからない。もしかすると、当人も撮っている最中はわからなかったかもしれない。次の映画ができるまで、それは誰にもわからない。