亡国のイージス

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監督:阪本順治
出演:真田広之/寺尾聰/吉田栄作/谷原章介/豊原功補 /光石研/岸部一徳/原田美枝子/原田芳雄/中井貴一
原作:福井晴敏(「亡国のイージス講談社刊)
製作:坂上直行/久松猛朗/千野毅彦/住田良能
脚本:長谷川康夫
配給:日本ヘラルド映画/松竹
2005年/日本/127分

 期待はずれ。阪本順治には珍しい失敗作。脚本がまるで駄目。海外を意識したとたんにおかしくなったのでは。原作を読んでいたのがまずかったのだろうか?原作のサスペンスやどんでん返しのおもしろさがない。原作のテーマも人物の魅力もない。ただ、原作のあの長さや書き込みのしつこさもあまり好きではないのだけれど。でも、これは原作に引きずられてはいて、大胆に設定を変えてしまう度胸もない。不思議だ。脚本がよっぽど悪いとしか思えない。脚本家が原作に完敗している。あれだけ複雑な話を2時間に納めるならもっと絞らないと、何も焦点が見えてこない。絞ればどうにでも絞れる原作なのに、全部そのまま短くしたみたいで、何だかダイジェスト版を見たような感じ。それなら、いっそ3時間にする度胸もなかったのか?
 キャストの役者は良い。でも、原作のイメージでは、真田弘之と寺尾聰はミスキャスト。そもそも、原作がかわぐちかいじのマンガの登場人物のイメージで書いているんだから、いっそアニメで良かったのかも。意外で良かったのは、原田芳雄の総理大臣。あのキャラクターにステレオタイプの政治家をやらせるとこうなるというのは、大発見だと思う。岸部一徳中井貴一佐藤浩市は想定範囲内だけど、やはり良かった。
 陸上の背広組の方が「KT」同様の陰鬱でいかにもお役所という感じで、面白く見てしまう。全面協力してくれた自衛隊には申し訳ないけれど。
 それにしても、イージス艦って醜い船だねえ。やっぱり、戦艦というと宇宙戦艦ヤマトのイメージなので、巨砲がないと見た目に締まらない。あの短小の砲塔は何?と言っても、映画のためにある船じゃあないから仕方ないけれど。
 結構御客は入っていたけど、原作を読んで見に来たという人だと思う。阪本ファンではなく福井ファンなんでは。そういう意味では、映画としては「終戦のローレライ」の方がエンターテイメントとして良くできていたという感じ。小説はこっちの方が数段良い出来だけれど。エンターテイメントの映画としては、脚本がこなれていない。にもかかわらず、何故、反乱を起こしたのかというメッセージも伝わっていない。原作を読んだ人が、原作に絵をつけたダイジェスト版と思って見に行くための映画。

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

亡国のイージス 下(講談社文庫)

亡国のイージス 下(講談社文庫)