「司馬遷―史記の世界: 武田泰淳 」

司馬遷―史記の世界 (講談社文芸文庫)

司馬遷―史記の世界 (講談社文芸文庫)

 読了。当然だが、「史記」ちゃんと読んでないと、おもしろさが十分理解できない。でも、これを第二次大戦中、昭和十八年に書いていた武田泰淳は、やはり自分を「生き恥さらした男」と言う複雑な思いを胸に書いていたのだと思う。自分を司馬遷になぞらえることの傲慢を韜晦する余裕もないせっぱ詰まった厳しい思考の息づかいは、「史記」をロクに知らないものにもひしと伝わってくる。
 作家が戦争中に何を書いたか。改めて、調べてみたくなってきた。