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• 解の示されないフラストレーションの残るミステリー映画。誰が殺したかをはっきりさせられない、という状況そのものが結果であり原因なので、これはこれでおもしろいし、多分答えを出してしまったらどう思ったかというと、むしろ問題は曖昧になったかもしれないが、やはりドラマとしてはフラストレーションを感じないではない。でも、やっぱりこれでいいんだろうなあ。写真を見つけてからの展開はちょっとさくさく行き過ぎのようなところもあるけど、この辺からなかなかスリリング。
• 役所広司と豊川悦治は、もう、さすが名優。薬師丸ひろ子と柄本明が何と言っても良かった。これだけ力のある芝居を見せてくれる青山真治の演出力もさすが。役所広司の役柄というと、自分で何か出来事をおこす訳ではないが、常に何かに巻き込まれるという役が多くて、そこで改めてどうするかを問われるという、いわば『巻き込まれる男』とでもいった役どころが多いような気がする。今最も多くの人の共感を得られる俳優なのではないか。豊川悦治のすごみも、ずっと利いている。でも、この二人はもう実力的にはエース級なので、やはり、よかったと改めて思わせてくれるのは薬師丸ひろ子。女の怖さ爆発で、私も『そんな目で見るなよ！』と言いたくなった。怖い役としては、柄本明も堂々たる怪演だと思う。
• ストーリーとか役者とか、要素を一つ一つ考えてみると、どれもいいんだけど、全体として何かまだ物足りなさを感じるのは何故だろう。個人的にはなかなか満足したけど、友達にあえて見たほうがよいと勧めはしない映画、という気がする。まじめというか、愚直にやる、というところが青山真治の魅力＆聡明さだけど、本当は馬鹿になりきったなりふりかまわないものを作りたいんじゃないのか。御利口で聡明な青山真治よりも、自己恋着でうっとおしいＬ．カラックスの新作はいつかまた見られるんだろうか、と、ふと一人で勝手にいじわるなことを思ってみたりもする。