東京国際映画祭 「忠次旅日記」 @シアターコクーン

 伊藤大輔の幻の名作。見逃していたけど、やっと見ることができた。なるほど、これは傑作。最初の造り酒屋の大きな酒樽と子供の対象の妙とか、クローズアップの素晴らしさとか、絵がとにかくしまっている。大河内伝次郎国定忠治のセリフ(といってもサイレントだけど)も泣かせる。今回の復元は95分で、3部作の半分くらい。1991年に発見されたフィルムを復元し、すっ飛んでいるところをシナリオを見て説明を入れたもの。多分、これで半分くらいなんだろうか。
 上映前に佐久間良子さんと品田雄吉氏対談と、弁士の大衆演劇の方の踊りのおまけ付きだったけれど、別に佐久間さんに縁のある映画でもないし、さっさと上映初めてほしかった。11時30分からだから13時くらいまでと思っていたら、終わったのは14時で腹が減って死にそうだった。この後のプログラムも見ようと思ってスケジュールを組んでいた人とか、予定が入っていた人は困ったろうな。東京国際映画祭の運営のひどさは有名だけど、こういうことか、と納得。これまで敬遠してたけど、若松とこれを見たかったんで、今年は来て見たが、噂はやはり正しいと思った。一応色々手は回しているんだけど、本当の熱意がこもっていないので形だけになっているのだなあ、という印象。まあ、コンペ部門の作品にすべてそれは出ているんだけど。エドワード・ヤンの追悼をやったのはいいけど、ここで賞をもらった「クーリンチェ殺人事件」がプログラムに入っていないんだもんなあ。大体、これと若松孝二を超えるような映画なんて、多分あるとは思えないんだけど、それが両方朝一の上映というのも間違っていると思う。レッドカーペットとか、そういうイベント屋的なことは派手にやるけれど、セレクションとかプログラムとかそういう本質的なところは三流だなあ、と思う。大体、六本木と渋谷じゃプログラムの梯子も大変だろうし。これはみんな怒るのももっともだなあ。電通映画祭なのかな、これ。
 弁士さんは二人で交互に入れ替わりながら担当。鳴りもの、ヴァイオリン、三味線、トランペット、ピアノという構成。字幕を呼んでいる状態だったり、絵より先にしゃべってしまったり、まあ、ご愛敬か。